戸田:今年度のPeace Now! 沖縄の取り組みについてお聞かせください。
佐藤:まず参加者の方々には事前学習会で、沖縄戦の特徴である、地上戦が起こったこと、幼い子供も含め、多くの市民が戦争に巻き込まれていったことについて、勉強をしてきていただきました。その上で、なぜ組織的戦争が終わった後も沖縄の各地で戦闘が続いていたのか、なぜ多くの市民が巻き込まれていったのかを考えましょう、という投げかけをしていました。
また、今の沖縄で考えたいこととして、米軍基地があること、現在も不発弾が見つかっているということについても、事前に考えて欲しいと伝え、当日を迎えました。
Peace Now! 沖縄 2025のテーマは2つ掲げていまして、一つは当時いた様々な人の立場を考え、多角的に想像していくこと。もう一つは、この80年間どうなってきて、これからどうなっていくのかを軸に企画作りをしていきました。

また、沖縄で平和学習を行うにあたり、沖縄線の数か月の間で、どこで何が起こったのかという時系列を知らないとフィールドワークが難しくなるため、参加者の皆様には地図と米軍の進撃ラインを事前にお伝えしていました。昨年のPeace Now! 沖縄で米軍の進撃ラインをマッピングしていくというワークを行っていたため、そこから着想を得て今年も確認を行いました。

また、Peace Now! 沖縄だけ現地の実行委員という括りがなく、全国の大学生協から実行委員を集め実施しています。(広島・長崎は現地や近隣地域の大学生が集まり実施している)今年は、東北、東海、関西などから集まった他、沖縄で生まれ育った方が一名実行委員として、今沖縄がどうなっているのか、この数年で何が起きているのか、という内容については特にこの方が頑張って考えてくれました。
当日の話に入って行きたいと思いますが、まず1日目は、平和祈念資料館に行き、隣接している平和祈念公園でフィールドワークを行ったのち、最近の沖縄どうなのかとか、今沖縄どうなのかみたいな話を中心に取り扱いました。
その後夜に行った企画の一つ目は、沖縄の新聞会社が出している実際の新聞記事を元に、沖縄ではどういう問題が起こっているのか、どういう報道がされているのかを考えるというものでした。
取り上げたテーマは基地の負担と教科書の記述問題と、不発弾の処理・事故の問題、の三つでした。

また、企画の二つ目ではクイズ大会を行い、今、沖縄県内で米軍基地がどのくらいの割合を占めているのかや、毎年どれくらい不発弾が発見されるのかを、難しくならないよう勉強していきました。
2日目はみんなでヘルメットを被り、懐中電灯を持って、自然洞窟に入りました。その後はひめゆりの平和記念資料館に行き、ひめゆり学徒隊について学びました。また近くにある海軍司令部があった場所にも行き、資料館を見て周りました。
こうしてフィールドワークとして3つの場所に行った後に、沖縄で平和教育を行っている株式会社さびらの狩俣さんにご講演をいただきました。狩俣さんは現在20代で、同じような若者の感覚で講演をして頂けると思い、依頼させていただきました。 事前に最後は「語りなおす」に繋げたいと相談していまして、そもそも平和学習は何故行うのか、という視点なども含めて講演をしていただきました。
また、その後実施したワークショップでは、「戦争プロパガンダ体験ワーク」を行いました。

戦争に向かっていく社会はどんな状態なんだろう、というのを実際に考えるといった内容になります。参加者の皆様には、メディア・教育・法律・エンタメの4つのジャンルで、それぞれどういったことが起こると戦争に繋がっていくか、というのを、参加者が権力のある人になったとしたらどうするか、という感覚でロールプレイングをしていただきました。

実際に参加者の皆様が記入したワークシートを見ると、「戦争系のゲームを増やすと、戦争がいいものとして根付いていく」「デマ情報を流す」「歴史の教科書を加工する」といった内容が書かれています。このようなことを考えてもらうことで、逆にこの状態にならなければ戦争は起こりにくいかもしれない、という逆の発想から考えるワークショップとなりました。

3日目は、我々が3日間学んでこれたのも、前の世代が語り直してくれて来たからだということを前提に、「語りなおす」とはどういうことなのかを考える企画を行いました。
参加者の世代は、中学や高校時代にコロナに直面している世代です。こういった経験は、おそらく数十年後に自分の子供に「私が学生の頃はコロナでね」みたいに絶対話すよね、という導入から、何かがあったことを語り直すのは自然なことだし、当たり前だし、伝えていかないといけないから伝えてるという自分ごととして捉えてもらった上で、それは戦争や平和を語り直すことと近いものではないか、というイメージを持っていただきました。
そして参加者の皆様には、自分はどうやって伝えるか、なんで伝えないといけないのかを考えていただき、最後には、どうやって、誰に伝えていくのかを考え、宣言していただきました。
戸田:新聞記事に着目したきっかけは何だったのでしょうか?
佐藤:新聞記事のワークをやりたいって言い始めたのも、その沖縄に住んでる今沖縄大の2年生の方なのですが、その方が持つ課題意識に、1番最初の日に行った平和祈念資料館は、市民目線の語りで構成されている資料館なので、市民ではない側の目線が消えてしまってる、というのがありました。 また、教科書の記述が操作されることによって、平和教育において何が正しいのかわかりにくくなってしまう、生徒はその時に教えられてることが正しいと思うため、事実なのか事実じゃないのか、微妙なことを教わっていくのは良くないのではないか、という課題意識もありました。そういったところから、新聞を取り上げるのがいいのではないかと意見を出し合い、企画作りを進めていきました。
戸田:教科書の記述問題はまさに現在起きている問題で、取り上げられた新聞も沖縄タイムズの2024年の記事なのですね。
佐藤:そうです。また、沖縄で話されてることは、本島の方ではあまり話されていなかったり、情報が流れて行きにくいという現状もあります。それこそ、沖縄出身の方以外のメンバーは沖縄にルーツがない人たちだったため、今回の交流の中で意外と知らないことが多いと気づきました。
沖縄出身の方も、Peace Now! 沖縄に参加するまで沖縄戦という歴史は身近ではなかった、平和活動にあまり関わって来ていなかったそうで、ギャップを感じ、企画立案に繋がったとのことです。
戸田:その方がギャップに感じたこととは、具体的にどういった内容だったのでしょうか?
佐藤:その方の感覚的に、中学校などの沖縄の平和教育は 、その時クイズに答えられればオッケー、テストで点数を取れれば良い、というものだったと捉えていたと。そんな中、高校の時に、県外の人に向けて沖縄戦を伝えるというプロジェクトに参加したことで、自分も沖縄で暮らしていたけど知らないことがたくさんあること、そして自分が学んだことを伝えた時に、伝えられた側も知らなかった、沖縄戦のことは実際あまり知られていないんだと思ったと。そういった自身の認識とのギャップがあったと語っていました。
戸田:続いてワークショップで行った「戦争プロパガンダ体験ワーク」について、この企画を行った背景についてお聞かせください。
佐藤:実行委員側から最後に「語りなおす」のテーマに繋げるため、グループワークをしたいと相談をする中で、戦前の社会が、プロパガンダによって戦争に向かっていく様子を考えるワークがあると提案していただいたのがきっかけで企画に取り入れることにしました。
戸田:実際にやられてみて、参加者の皆様はどういった感想を抱き、どういったものを学べたのでしょうか?
佐藤:突拍子もない意見もたくさん出していいよという前提で進めていたので、結構いろんな意見が出ていたと思います。 自分自身すごく新鮮に感じましたし、逆転の発想で平和を考えたことで、イメージがしやすかったという感想が多かったと思います。
ここからは自分の感想になってしまいますが、参加者は、「エンタメとしてゲームを作って、戦争がいいものだという刷り込みをすると戦争に向かっていってしまうのではないか」「法律を変えて無理やり戦ってしまえば戦争に向かうのではないか」といった様々な意見を出してくれましたが、こういった話が当時の沖縄でもあったのではないか、とイメージできる企画になったと思います。自分たちとしても斬新に、新しい発想でワークを行えたと感じています。
戸田:戦争経験者じゃない私たちが平和を考えるために、当時の人の考えを追体験する、というワークショップだったのでしょうか?
佐藤:今戦争が起こったらどうなるのか、ということを考えるためのロールプレイだったと思います。その前の行程で行った資料館などで、当時は良いと思っていたし、当たり前だと思っていたことが、終わってみると全然そんなことはなかった、のような証言や展示を見て来ているので、今、自分たちがいる現在で似たようなことが起きたらどうなるのか、ということを考えることが出来ました。
戸田:身近な例で考えようということで、自分たちがコロナ禍を語り直すというところから始まり、戦争のことも自分たちが語りなおしていくという話に繋がっていたと思います。その中で、最後に「誰に伝えるのか、どう伝えるのか」を参加者に発表していただいたとありましたが、どういった回答があったのでしょうか?

佐藤:最終的には宣言をしてもらったのですが、その前に一度考えを付箋に書き出して、班ごとに話し合っていただきました。
中には、この3日間で学んだことをそのまま伝えたいとか、まずは身近な人から、同じゼミの人や同級生に伝えたい、という意見が多かったと思います。あとは、学んだことを自分がプレゼンをするという形で伝えたいと言っている方も一定数いて、これは大学生協っぽさが出ているのかもしれませんが、実際に学んだことをスライドやレポートにして伝えたいと言っている方が多かったという印象です。
戸田:沖縄の実行委員会は、沖縄出身者でない方がほとんどを占めていたそうですが、進める上で難しかったことや、壁を感じた事はあったのでしょうか?
佐藤:難しかったと感じたことはあまりありませんでした。 実行委員の8名は、半数がPeace Now!に参加したことのある方で、残りの未経験の方のうちの一人が沖縄大の方という構成でした。 経験者の中には、昨年広島や長崎に参加して、今年は沖縄の実行委員会に入ったという方もいたので、様々な視点から作ることができたと思います。もちろん初めて参加された方の中には沖縄戦のことは教科書レベルでしか知らなかった方もいましたが、出身地が違うということがプラスに働いた面が多かったと思います。
それこそ沖縄大の方との会話をしていく中で、沖縄では当たり前だと思ってたけど、本島では違うと判明して、そういった中で企画を立てていったことが、結果的に色濃く出てきたのではないかと感じています。