戸田:今年度のPeace Now! Hiroshima取り組みについてお聞かせください。
藤島:まず前提として、Peace Now!は広島、長崎、沖縄の、それぞれの各地域の実行委員が主体・中心となって企画を作っています。特に構成の仕方は決まっていないため、各地域の色が出るような内容となっています。
私が参加した広島の実行委員会は、中国四国ブロックに所属している大学生協の学生委員から選出された8名で構成されていました。
Peace Now!3地域の実行委員会体制は、行委員長、事務系を担当する事務局次長、企画のリーダーである企画局長、のように役割分担をしており、私もサポートに入りながら企画を作っていきました。
今年度のPeace Now! Hiroshimaは、「過去・現在・未来」を意識した企画構成になっています。
企画1日目は、過去に焦点を当て、被爆者講話、広島平和記念資料館、過去起きた事実・エピソードを知ることを中心に行いました。
被爆者講話では、実際に15歳の時に広島で被爆された切明さんから、被爆される前の話をていただきました。被爆前は広島が軍都の町として誇りに思っていたし、でも、その一方で、植民地(東南アジア)に対しては差別的な表現をしていたし、実際に差別をしてしまっていたという反省も混じりながら話していただきました。

原爆直後の友人とか知り合いを看病したお話や、生き残った人でもいきなり出血したとか、ぶつぶつができてしまって、混乱し、いつまた自分もこうなるのかと怖い思いをしたという話を聞きました。
最後に、なぜこの活動をしているかについて、自分が生き残ったことを、使命だと思って続けていると。こんな思いを皆さんに2度として欲しくないし、起こして欲しくないという思いを伝えていただきました。
その後訪れた広島平和記念資料館でも、当時の絵や写真が展示されていまして、1日目は日本に起きた被害と、やっぱり武力は良くないよねという、悲惨さに着目をした構成となっていました。
そんな中で迎えた2日目は、広島平和記念公園にある爆心地の島病院、原爆の子の像といった遺跡を回り、その後グループワークを行いました。
グループワークでは、原爆を落とした側の視点に立ってみようという企画を行いました。なぜ原爆を落とすのか、原爆を落とす側の賛成意見や、その他の国の視点に立って参加者に考えてもらいました。

アメリカの視点で、例えば賛成だった意見に対しては、アメリカ人にも自分の暮らしがある、生活があるから、落とさざる得ないという考えがあるという意見がありました。一方日本視点の賛成意見では、もしこのまますごい長く苦しみを味わうんだったら、威力のある原爆を落として正解だったんじゃないかという意見がありました。
このように多角的な視点から平和について考える中で、わたしたちは戦争が持つ意味にも着目しました。

左側が、戦争のデメリットの部分、死者を出す、環境破壊につながるといった内容です。右側は良い点、技術の進化やロケット技術、宇宙開発にも繋がっています。
もちろん、私たちは戦争は良くないと考えていますが、あえて今まで疑わなかったところに疑いを持たせることで、改めて自分の中で戦争はしてはならないという考えを確立してもらいたかったという背景があり、取り組んでいただきました。
次のグループワークでは「平和を分析しよう」というのを行いました。

ここまでの取り組みを経て、現在の日本は平和なのかと考えた時に、例えば、武力を行使していなくとも、賃金が上がらないなど、日本が置かれている状況を見ると、全然まだまだ平和とは言えないんじゃないかといった意見も出てきました。中には「今の日本は平和ですか?」って聞かれたら、「はい」と答えるけど、それってもしかしたら平穏と勘違いしているのではないか、といった疑問が出てくるといったように、改めて参加者自身が平和について分析することが出来たと思います。
最後の「未来の時間」では、「考動する」意味を改めて考えてみようという取り組みとして、まず、簡単にできることから始めてみようということで、マインドマップを作成しました。
出てきた意見では、平和に関する授業を取る、Peace Now!に参加した知見を基に家族を旅行に連れて行きガイドをする、現地に訪れてお土産を買う、ご飯を食べることも広島の発展に繋がるといった、本当に些細なところから考動するというアイデアがたくさん出てきました。
そして最後の企画では平和新聞を作りました。マインドマップで書いた中でも特にやりたいことや、この考動を起こしたら未来はどうなっているか、といったことを考え、書いていただきました。
最終日のオプション企画として参加者からテーマを募集し、班をシャッフルしてテーマトークを行うPeacetalkを行いました。
Peace Now!は実行委員会が企画を作成しているので、どうしても実行委員が伝えたいことを参加者に伝えるという形になってしまいます。なので、Peacetalkでは参加者同士でこれについて学びたいと発信していただき、学び合いや対話を大事にするという形にしました。
選ばれたテーマは、今回のPeace Now!で得た学びを周囲にどう伝えていくかと、あなたが日本・アメリカのトップになったら何をしますか?の2つでした。学び合い、主体的な対話を行なっていただく時間を作れたと思います。
戸田:2日目のグループワーク「平和を分析しよう」では、参加者が様々な国の視点に立って考え、賛成意見や反対意見を書いていたと思います。日本だけではなく他の国の視点にも立って考えようとなったきっかけはなんでしょうか?

藤島:やっぱり1日目の内容的にも、どうしても広島の被害に意識が向いてしまう、やっぱり日本、広島は被害者なんだ、という風に受け取られてしまうことが気になっていました。
事前の実行委員会の会議の中でも、原爆を落とした側も落としたくて落としたかったのか、そういうわけではないよねという意見が出ていました。参加者には、日本の被害者としての一面だけではなく、ちゃんと自分の意見として、改めて日本って本当に被害者なのか、そこに疑問を持って欲しい。
トルーマン大統領の言葉も実行委員が持ってきてくれたものですが、日本は被害者としての側面だけではなく、加害者としての側面もあるのだということをちゃんと伝えたかったんです。参加者には、これを踏まえた上で、あなたはどう思いますか?と問いたかったという背景があって、いろんな視点に立って考えるグループワークを行いました。
戸田:参加者はアメリカや他の国の視点に立って考える時、どのようにその考えを想像したのでしょうか?
藤島:実行委員会の会議でも議題に上がりましたが、私たちは平和を扱うので、間違いを教えてはいけない。なので、事前に実行委員の中でしっかり学習して、その内容を参加者たちに伝えてから行いました。広島県のホームページを見ると、大学生にも分かりやすく簡潔に、日本とアメリカのそれぞれの視点なども含めて書かれていた資料があったので、それらを学習に活用していました。
戸田:「未来で考動する」では、「考えて動く」という漢字が使われていますが、どのような意味が込められているのでしょうか?

藤島:普段使っている「行動」は、意味を調べると、衝動的といった意味合いが含まれていますが、私たちがやってる企画を考えると、1日目、2日目のプログラムを経て、考えてきた蓄積があります。そういった企画の流れを踏まえて、3日目の「考動する」という文字には、私たちは「考えて実行するんだ」という想いを込めて、造語を作りました。
戸田:時間外で実施されていた「対話ノート」という企画はどういったものなのでしょうか?
藤島:Peace Now!広島では対話ノートという企画を行なっておりまして、休憩時間などで参加者が平和への自分の思いを書くノートになっています。これは、広島和記念資料館の中にある対話ノートからインスピレーションを受けて企画しました。
また時間外の取り組みでいうと、今回は参加者が手に取れる場所に折り紙を設置して、平和への願い、祈りを込めながら鶴を折っていただきました。参加者の皆様には主体的になってほしいと思っていたため、運営からは特に指示はしていませんでしたが、3日間でトータル604羽の折り鶴が集まりました。この折り鶴は実行委員の手で原爆の子の像に届けました。